友人のFacebookに「春の祭典」の動画がアップされていました。
ホルンがピストンなんですよね。
ナチュラル・ホルンから進化
ホルンは最初は、ヴァルブのないナチュラルホルンでした。バルブがないために、出る音は自然倍音だけです。自然倍音列とは、ある一つの音の波長を2分の1、3分の1、4分の1…と短くしていくと出る音です。基準の音を「ド」とすると、次の倍音は1オクターブ上「ド」。さらに上の「ソ」と「ド」。そのオクターブ上は「ド」から「ミ・ソ・シ♭・ド」。このようにオクターブ上がるごとにそれまでの倍音のあいだに1つずつ音が入ってきます。そのため高い音に行けば音階に近い形になります。金管楽器はこのシステムを使っています。だから、高い音に行くにつれ、となりの音との距離が短くなって、コントロールが難しくなるんですね。また、この自然倍音で組み立てた和音は、共鳴するため、にごりのないきれいなハーモニーとなります。
昔のホルンはバルブがなかったために、出る音が制限されていました。そのために曲の調に合わせて抜き差し管を変えていました。抜き差し管を変えると楽器の長さが変えられるので出る音が変わるわけです。そのため、オーケストラのホルンやトランペットの楽譜には「in F」や「in B」だけでなく「in E」「in Es」「in C」「in D」などいろいろな調が出てきます。奏者はこれに合わせて抜き差し管を変え、演奏していたわけです。交響曲などでは楽章によって調が違うため、楽章のあいだに管を入れ替える曲は多くありますが、中には楽章の途中でも転調したときには抜き差し管を変えなければならない曲もあります。
ハンド・ストッピング
さらに18世紀頃、右手でふさぐことよって音を上げたり・下げたりする技術も広がり、それまでは出なかった音も使われるようになりました。軽くふさぐと音は下がり、きつく閉めると音が上がります。
こちらの動画では、半音階も演奏しています。
バルブ・ホルン
そうしたなかで、1815年ごろにバルブ・ホルンが発明されました。これは抜き差し管を変える手間・時間を短縮しました。それまでは1つの曲の中で抜き差し管を変えるには数十小節の休みが必要でしたが、バルブシステムによって抜き差し管の入れ替えのための休みが必要なくなりました。それまでは、モーツァルトの交響曲第25番のように1.2番ホルンはin B、3.4番ホルンはin Gなどとして違う管のホルンを配置することで、ホルンのサウンドが必要なときには使えるよう工夫していましたが、バルブ・ホルン登場後は作曲家は好きなときに4本のホルンを使うことができるようになりました。
ただ、せっかく新しいものが開発されても伝統あるオーケストラの奏者たちや音楽学校では、なかなか取り入れてもらえなかったようですが、その便利のよさで徐々に広まっていきました。
ピストン・ホルン
話は、ピストン・ホルンに戻りますが、最初に開発されたバルブ・ホルンがピストン・システムでした。その後1832年に回転式のロータリー・バルブが開発され、現代のホルンの形となったわけです。ピストン式ホルンは、ロータリー式ホルンが開発された後も20世紀中ごろまでイギリス等で使用されていました。デニス・ブレインがピストン・ホルンを使っている写真もあります。イギリス人指揮者のトーマス・ビーチャムがロンドン・フィルハーモニー管弦楽団にアレキサンダーのダブル・ホルンを使うよう勧め、次第にピストン・ホルンは姿を消しました。
ピストン・ホルンの4重奏
Electric Piston Horn
「piston horn」で検索したら、「Electric Piston Horn」なんかが出てきて、「なにそれ?おもしろそう!」と思わず覗いてしまいました…。